2023年のWBC日本代表には、NPBでのプレー経験がない選手として、ラーズ・ヌートバー選手が唯一選出されました。WBC日本代表に選出されるまで日本ではあまり取り上げられることのなかったため、名前は聞いたことがあるけどどんな選手なのかわからない、という方も多いかと思うので、今回はヌートバー選手についてまとめたいと思います!
ラーズ・ヌートバー選手のプロフィール
ラーズ・ヌートバー(Lars Taylor-Tatsuji Nootbaar、日本名:榎田 達治〈えのきだ たつじ〉)選手は、1997年9月8日にアメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス郡エルセグンドで、オランダ系アメリカ人の父チャーリーと日本人の母久美子の間に、3人兄弟の末っ子として誕生しました。
ヌートバー選手のお姉さんとお兄さんは母親の地元埼玉で生まれているものの、ヌートバー選手はアメリカで誕生しており、日本での生活経験はありません。
ただし、2006年には、アメリカで行われた日米親善高校野球大会の日本代表船橋悠選手(当時、早稲田実業高校)、塩澤佑太選手(当時、帝京高校)がヌートバー家でホームステイしており、その後プロ野球選手となる田中将大選手や斎藤佑樹選手らとも交流していました。
また、2007年のリトルリーグのオールスターチームに選ばれた際には自分は日本人で、日本を代表していると自己紹介しており、幼少期から日本に対する思い入れは強かったことがうかがえます。
ヌートバー選手は、高校時代は野球と共にアメフトをプレーし、QB(クォーターバック)として活躍しました。大学は南カリフォルニア大学に進学し、2018年のMLBドラフト8巡目(全体243位)で指名を受け、セントルイス・カージナルスに入団しました。
2019年は、Aクラス・A+クラス・AAクラスでプレーし、順調にステップアップしていきましたが、2020年は新型コロナウイルスの蔓延によりマイナーリーグの公式戦が中止となったため、試合出場はありませんでした。2021年はAAAクラスで開幕を迎え、シーズン途中の2021年6月22日デトロイト・タイガース戦でついにメジャーリーグデビューを果たし、2021年シーズンは58試合に出場して打率.239、5本塁打、15打点、2盗塁を記録しました。
2022年シーズンはメジャーリーグに定着し、108試合に出場して打率.228、14本塁打、40打点、4盗塁を記録しました。
ヌートバー選手の特徴
打撃成績
打率 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 出塁率 | OPS |
---|---|---|---|---|---|
.228 (55位相当) | 14 (61位) | 40 (102位) | 4 (90位) | .340 (22位相当) | .788 (22位相当) |
※ヌートバー選手は2022年シーズンでは347打席で規定打席未達のため、打率・出塁率・OPSは仮に規定打席に到達していた場合の暫定順位
(2022シーズンの規定打席は502打席)
打撃成績からは、打率に比べて出塁率が大幅に高く、規定打席に到達していた場合の暫定順位も上位に来ることから、選球眼が良く四死球を多く稼いでいることがわかります。
Statcastのデータ
https://baseballsavant.mlb.com/で公開されているStatcastのデータをピックアップして、他の日本人野手(大谷翔平選手・鈴木誠也選手)との比較を行い、特徴を見ていきます。
カテゴリ | 項目 | ラーズ・ヌートバー | 大谷翔平 | 鈴木誠也 |
---|---|---|---|---|
打撃 | Barrel % | 12.1 | 16.8 | 11.0 |
Barrel/PA | 7.8 | 10.8 | 7.2 | |
Exit Velocity | 91.7 (上位10%) | 92.9 (上位3%) | 89.6 | |
Max EV | 113.0 | 119.1 (上位1%) | 111.3 | |
Launch Angle | 10.7 | 12.1 | 11.2 | |
Sweet Spot % | 30.4 | 35.0 | 36.9 | |
XBA | .247 | .278 (上位8%) | .247 | |
XSLG | .414 | .552 (上位1%) | .419 | |
WOBA | .342 | .370 (上位6%) | .334 | |
XWOBA | .346 | .385 (上位2%) | .327 | |
XWBACON | .377 | .486 (上位2%) | .397 | |
HardHit% | 46.0 | 49.8 (上位7%) | 41.3 | |
K% | 20.5 | 24.2 | 24.7 | |
BB% | 14.7 (上位2%) | 10.8 | 9.4 | |
走塁 | Sprilnt Speed (ft/s) | 28.3 | 28.3 | 28.2 |
HP to 1st | 4.33 | 4.09 | 4.28 | |
守備 | OAA | 1 | – | -4 |
Attempts | 200 | – | 226 | |
Success Rate | 86% | – | 88% | |
Estimated Success Rate | 86% | – | 89% | |
Arm Strength(Max) | 96.7 (野手全体44位) | – | 96.1 (野手全体52位) | |
Arm Strength(Orverall) | 92.6 (野手全体22位) | – | 89.7 (野手全体64位) |
2022年シーズンのStatcastのデータから、以下のようなことがわかります。
- ヌートバー選手は低くて速い打球が多く、選球眼が良い
(Launch Angleが低い・Exit Velocityが高い、BB%が高い) - 大谷選手は、角度を付けて速い打球を打つことで、バレルに入る確率が高くなり、結果的に各種打撃指標が高くなっている
(Launch Angle・Exit Velocityが高い、Barrel %・Barrel/PAが高い) - 鈴木誠也選手は良い角度で打球は上がっているが、打球速度が低い分だけバレルに入る確率が低いように見える
- 足の速さ(Sprint Speed)自体は3選手ともほぼ同じ(MLB全体の上位25%程度)だが、大谷選手の一塁到達は頭抜けて速い(MLB全体5位)
- 共に外野手のヌートバー選手・鈴木誠也選手の守備率を見ると、鈴木誠也選手の方が高いが、OAA(平均的な選手よりもどれだけアウトを稼いだかの指標)はヌートバー選手の方が高い
- ヌートバー選手・鈴木誠也選手共に強肩だが、とりわけヌートバー選手は強肩
ヌートバー選手が使用する野球用品
バット
ヌートバー選手は2023年のWBCでは主に3メーカーのバットを使い分けているようです。
Powerbull(パワーブル)
Powerbull社は、2003年創業のテキサス州エルパソのバットメーカーで、ヌートバー選手がシーズン中も愛用しているバットメーカーになります。
Overfly(オーバーフライ)
Overfly社は、カリフォルニア州ラホヤに拠点を置くバットメーカーで、こちらのバットについてもヌートバー選手はシーズン中から愛用しているメーカーになります。
また、Overfly社はPowerbull社を買収したことでも話題になっています。
Chandler(チャンドラー)
Chandler社はMLB2022年シーズンのシェア5位のバットメーカーで、2023年から大谷選手が使用していることでも話題になっていますが、ヌートバー選手も2023年WBCでは使用しているようです。
※Chandler社の詳細はこちらの記事参照
バッティンググローブ
BRUCE BOLT(ブルースボルト)
BRUCE BOLT社は、2017年にBear Mayerという当時16歳の野球選手がより良いバッティンググローブとランドクルーザーの購入資金を得るために創業したバッティンググローブメーカーになります。
また、「BRUCE BOLT」という社名はおじいさんの「BRUCE」が2度雷(BOLT)に打たれて生きていることからきているようです。
Franklin(フランクリン)
2023年のWBCではBRUCE BOLT社のバッティンググローブを使用しているヌートバー選手ですが、2022年シーズン中はMLBでも人気の高いFranklin社のバッティンググローブも愛用しています。
エルボーガード・フットガード
ミズノ
2023年WBCでは、ヌートバー選手は侍ジャパンカラーのミズノ社製のエルボーガード・フットガードを使用しています。
EvoShield(エボシールド)
EvoShield社のエルボーガード・フットガードは、変形させることができる柔らかい状態で販売されており、自分の腕や足の形状に合わせて成形することが可能なので、とても高いフィット性がある点に特徴があります。ヌートバー選手は、シーズン中はEvoShield社のエルボーガード・フットガードを愛用しているようです。
まとめ
これまで見てきたように、ヌートバー選手は低くて鋭い打球を放つ打撃と良い選球眼から生み出される高い出塁率と瞬足・強肩を生かした守備に特徴がある選手だと言えます。
2023年のWBCや今後のシーズンでの活躍に期待しましょう!
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